品川心中

 心中物にはシリアスな「心中時雨傘」というものもありますが、ごぞんじ「品川心中」はまったくふざけた噺。
 花魁のお染さんが、お金がなくて「移りかえ(衣替え)」ができない。もとはナンバーワンなのに、寄る年波に勝てず今は落ち目。恥をかくよりは死んだ方がマシ!と、心中の相手をさがす。金が原因で死ぬより色恋で死んだ方がカッコいいからです。で、本屋の金さんが選ばれる。
 この金さんの心理に着目すると面白い。最初は死ぬ気がありそうもない。しかしお染に一晩チヤホヤされて、すっかりマインドコントロールされる。翌日、死ぬ気満々でお染のところに来る。最後の晩餐とばかりに飲んだり喰ったり。そして高いびき。さーて、夜も更けた頃、お染に起された金さん、死ぬことをすっかり忘れている。
 お染がカミソリといえば「乱暴だ。ノドは急所だ」
 「急所だからやるんじゃないか」
 「カミソリで切ったやつは、あとを縫うのが大変だって」
 お染が裏の海に跳び込もうかというと「風邪引いているから」。
 もう死ぬ気なんか全然ないんですね。桟橋の突端まで行ってもジタバタ。業を煮やしたお染さん、後ろからドーン。金さんはドボーン。そこへ若い衆が「お染さん。番町の旦那がお金を持って来てるぜ」
 お金さえできれば、お染さんに死ぬ理由はない。
 海に向かって「さよなら、失礼!」。
 
 金さんは家財道具いっさいを売って親分に挨拶。本気で死ぬつもりだったのでしょう。しかし、美味いものをたらふく食べて、お酒を飲んで、花魁にチヤホヤされて、ウトウトしてるのを起されて、さあ死ぬよ!と言われてもねぇ。人生の楽しみを目一杯味わった後は、なかなか死ねない。さらに寝て起きると気分が切り替わる。誰でも覚えがあるはず。朝起きたら、昨夜と気が変わっていたってこと。
 そういえば、洗脳のマニュアルに相手を「寝かせない」というのがあるらしい。


 

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# by ukiyo-wasure | 2011-11-18 18:46 | 落語 | Comments(0)

神戸長吉

 「次郎長伝」の中、この人は特異なキャラだ。善でも悪でもない。ヤクザ者なのにフツーに臆病なのである。臆病者がヤクザとは。変な話、世襲だからなのです。武家を嫌ってヤクザになった大政とは逆。たぶんね、本人はヤクザなんかなりたくなかったのではないかと思う。

 この人の父親は度胸も貫禄も一杯の親分だった。加えて母親がまたスゴい。ヤクザの娘で恐いもの知らず。鬼のような奴らを前にスゴい啖呵を切る婆さん。長吉よりも強烈なキャラで登場して、自分の息子のことを皆に「臆病者」と紹介する。喧嘩に行ったら「生きて帰るな」ともいう。

 この時点では、周りの登場人物も、はたまた聴いているワタクシたちも、お定まりの「謙遜」だと思う。いや、思わされるのかな。そして「荒神山」の喧嘩の、それもあとの場面で長吉の真のキャラが明らかになる。

 これね
ぇ、母親が強すぎるからだろうと、妙に納得がいくのです。つまりあれです、反抗期がなかった子。

 ヤクザの親分の家に生まれて反抗期とは、
「るっせーやい。ぐれてやる。かたぎになってやる!」ってことなのか?

 …そうでしょう。長吉はヤクザになりたくなかったのに、母親が強烈過ぎて逆らえなかった。依頼心が強いのも、何でも母親が手出し口出ししてきたからでしょう。

 結論。息子が臆病なのは、おしま婆さん、アンタのせいだ!

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# by ukiyo-wasure | 2011-11-16 18:04 | 浪曲 | Comments(2)

アンパンマンは最強だ

 バイキンマンのみならず、いかなるヒーローよりも強い!
 乳幼児に絶大な人気で、どんなキャラクターも追随を許さないらしい。
 なぜ?……答えはあの色じゃないかと思う。とくに鼻の「赤」。人間は、オギャアと生まれて、薄ぼんやりとした光を認識するようになって、まずは白黒のコントラストがわかるようになる。その後にわかるのが「赤」。それから、なぜかはわからないけれど「黄色」が好きになるらしい。
 なるほどね。だからアンパンマンと並んで乳幼児がとびつくのが「そらジロー」なわけだ。
 落語の方で、ぱっとめくれた着物の裾から、燃えるような緋縮緬のケダシがチラリ!熊さん、思わずクラクラッ。
 赤ん坊も赤いものを見ると、何やらウレシき予感がしてくるのかも。
 ミッキーマウスのあの鼻が赤かったら、歴史は変っていたかもしれないのだった。

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# by ukiyo-wasure | 2011-11-15 20:55 | 日常 | Comments(0)

ふたなり

 志ん生師匠は「死」を料理するのが上手い。まるでロバート・ロドリゲスのようです。おぞましい場面はできるだけ想像力を掻き立てない話し振りをする。ヘタな噺家はメリハリなく、どんな場面もリアリティを出せばよいという語り口だから興醒めです。「ラクダ」「黄金餅」それから「ふたなり」。どれも死体が登場するけれど、超オカシイ!
 「ふたなり」というのは両性具有のことです。…枕でこんなことをいうのはヘタな噺家でしょうね。これがサゲなんですから。

 亀エモンというお爺さんと、お亀という年頃の娘が、真っ暗な森の中で出会う。
 娘は、ワケあって首をくくって死のうとしているがくくり方がわからない。で、お爺さんに見本を見せてもらう。
「…そしてな、下の桶を蹴る」とたんに亀爺さん、ブラーン。
 それを見た娘の方は死ぬ気が失せてしまいオサラバ。
 さて、亀爺さんが発見されたとき懐には娘から預った手紙があった。
 役人が読み上げる。
「書置きのこと。亀より。えー、ご両親様に先立つ不幸をかえりみず……ん?この者は何歳じゃ」
「八十二でございます」と村人。
「両親は長生きだな。…かの人と互いに深くいいかわし。…八十二で、やな奴だなあ。ええ…人目を忍ぶ仲となり、ついにオナカに子を宿し。オナカに子を宿し?……むむむ、この者は男子か女子か?!」
「漁師でございます」

 今でもありますね。薫さん、静香さん、純さん。そういえば亀井静香氏と荒川静香さんが結婚したらどうなるの?なんていらぬ心配をしている人もいましたっけ。

       

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# by ukiyo-wasure | 2011-11-15 00:18 | 落語 | Comments(0)

後っていつ?

 後(あと)といっても実際の位置ではなくて、時間的概念のこと。
 “石松金比羅代参”で「ちょうど今から七年あと」と、虎造が言っている。
「あと」を過去の意味で使っているのでした。
 普通「あと」って、過去でしょうか未来でしょうか。
「あとさき考えないで!」の「あと」は明らかに過去。
「あとのことは心配するな」は未来。
 うーん、わからない。
「僕の前に道はない 僕の後ろに道はできる」
 この有名な詩の立場も揺らいで来る。
 だって、前日、前年、さらには前科といえば過去のことなんだから。



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# by ukiyo-wasure | 2011-11-13 22:26 | 浪曲 | Comments(0)