2018年 10月 31日 ( 2 )

三島由紀夫「時計」男はスリ!


「時計」は1967年、「文芸春秋」1月号です。

売春婦の千栄と、そのヒモ男、勉のお話。


大変貧乏クサく、お互いの過去を知らないという、ステキに無頼派な世界。


オボッちゃまの三島が、足を踏み入れたことなど、あるわけのない世界。


「時計」とは、勉がいつも夢中になっているトランプの一人遊び


トランプはジョーカーを抜くと52枚

これを4枚ずつの山にして、時計の文字盤の形に並べる。

山は13ありますから、残り一つは円の真ん中。


全部裏返しです。


まず、真ん中から一枚めくる

コレが3なら、3時の位置の一番下に、表向きに入れる。

3時の位置の上のカードをめくる。

コレが6なら、6時の位置の一番したに表向きに。

これを繰り返して………


三人称の小説ですが、ほぼ「千栄」視点


トランプの遊びを千栄は勝手に「占い」と判断している。


最後まで「行き詰まる」ことなく、全部「表」になればいいと考える。


そっか、最後に13が出ればOKなのね。


と、勝手に解釈する。



ここで、フツーは「ん?」って、思う。



どうやっても、揃うに決まっている。


私は最初、ジョーカーが入っていて、それをめくったらゲームオーバーかなあと思った。


よーく読むと、「時計」というトランプ遊びは、占いじゃない。

「遊び」ですらない。


勉はスリ。指の動きを滑らかにするためのトレーニング。


勉の「手の器用さ」が、さりげなく、所々に出て来る。

とくにカミソリの使い方が素晴らしい。


Google先生によりますと警察の隠語で「掏摸」「とうも」というそうです。


音読みです。


時計の「時」=とう。

計=け=毛=も


トランプの13=Kを印象づける描写にも納得。


中の人は、「剣」や「蘭陵王」とちょっと違うかなあ……。


理系的トリックは、深沢か。


短い作品です。皆様、ぜひ読んでご確認を。




*追記

もっと深読みすると、勉は「スリの見習い」で修行中かも。

「時計」というワードは、一定時間内にトランプをすべて表にするという課題に挑んでいるとも考えられる。

タイムオーバーした時点でストップ。

「スリ業界」の「スリ免許」を得るためのテストが、このゲームと考えると、より深みのある作品。



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by ukiyo-wasure | 2018-10-31 11:14 | 詩・文芸 | Comments(0)

三島由紀夫「蘭陵王」をバッサリ!


「剣」を読むために、全集の「17」巻を借りたのですが、読んでいない作品が入っている。

「絹と明察」など長くて読む気がしない。


「蘭陵王」。ごく短い作品。

「群像」1969年11月号に発表。



「盾の会」のメンバーと富士の裾野で「演習」をしたときの話で「私小説」形式。


これも、ゴーストさんの「罠」ですね。


演習から宿舎に帰って来たところ。引用します。


 その日の演習で汗と埃にまみれたのち、帰営して食べる夕食は美味しく、入浴は快かつた。
 私は全身の汗と泥を、石鹸の泡を存分に立てて洗ひながら、皮膚といふもののふしぎな不可侵に思ひいたつた。もし皮膚が粗鬆であつたら、汗や埃はそこにしみ入って、時を経たあとは、洗い落とさうにも落とせなくなるにちがいない。皮膚のよみがえりとその清さは〜。
ーー中略ーー
 浴室のかへり、空を稲妻が横切った。
 
 
 
そして、部屋に帰る。簡素な部屋の説明。ささくれにヨードチンキを塗る。

そこへ、会員の「S」が訪れ、横笛で「蘭陵王」を吹く。その場には他の会員も四人。


さて、皆様、ここまでで「あれ?」と思ったことありませんか。

全集の付録の冊子で、三島本人が「私小説」と言っている。




 食事の前に風呂でしょ!




題名の解読いきます。


 蘭陵王=乱寮法


汗と埃まみれのまま食事とか、寮のルールを乱しちゃダメじゃん。




ラストが意味深です。

 又Sは、何時間もつづけて横笛を練習すると、吐く息ばかりになるためであらうか、幽霊を見るさうだ、といふ話をした。
 君は見たか、と私は問うた。
 いや、見たことがない、幽霊を見れば一人前だと言はれているが、まだ見たことがない、とSは答へた。
 しばらくしてSは卒然と私に、もしあなたの考へる敵と自分の考へる敵とが違っているとわかつたら、そのときは戦はない、と言つた。



「幽霊」、確かに見えます。正体は、開高健?




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by ukiyo-wasure | 2018-10-31 00:25 | 詩・文芸 | Comments(0)