2018年 05月 30日 ( 1 )

開高健「二重壁」意味はスパイ


作品集に入っている「二重壁」。1958年の作品です。


軍隊経験者の古田は会社員。平凡ながらも妻と仲良く暮らしている。
多くの同世代同様、戦場での「忌まわしい体験」がある。
童貞の彼が、初めて「慰安所」に行ったときのこと。


ちょっと長いですが引用。

古田は女の手の荒あらしいうごきを二、三度感じただけでたえられなかった。彼はのめって土に両手をつき、女はしたたかに液を浴びて倒れた。彼女は蒼ざめて目を固く閉じ、ふたたび死んだように土によこたわった。古田はひとつの季節がそんなみじめな終りかたをしたことに手のつけられないものを感じて佇んだ。
「……完了(ワンラ)」
 たどたどしい中国語をのこして彼は小屋から出た。


この後、たえられぬ疼痛。
どうやら性病に感染したらしい。
古田は、これが理由で子どもを作らない。
妻には、「身体の弱い妻に負担をかけないため」と言っている。


知り合いが、マジックミラーの話をする。「覗き見用」の鏡です。
実際に覗く体験をする。
このときの建物の構造が「二重壁」。壁の間に入り込んで覗く。
当然エッチな場面。
古田は何とも思わない。

夜、歯磨きをしていると、歯磨き粉のハッカ味に、突然衝動を覚えて、足音を忍ばせ、玄関から洗面所、応接間と、部屋から部屋を壁づたいに小走り。二階へ足音を忍ばせて登った。

と、まあ、忍者みたいな行動をとる。

妻の居る寝室へ行くが、どうも妄想に捕われているみたい。


ラスト引用します。


彼はうなだれたまま顔をあげることができなかった。緑いろの泡を吹いた、髪の薄くなりかけた男の顔を彼は正視することができなかった。
(……どぶだ。おれは、どぶだ)
夜の底に鏡が光っていた。



一言でゆうと、戦場でのトラウマを背負った男の物語です。

表向きは、トラウマ=慰安所の体験ね。


長々と引用したのは、いつも通り裏があるからです。


先にタイトル「二重壁」の解読。


二重壁=防音=ボーン=鐘=鉄漿(かね)

鉄漿とは何か。お歯黒用の液です。

鉄と酸を混ぜて作る。だから、



 酸っぱい=スパイ


古田の戦場での任務は「偵察」

最後に引用したような身体に染み付いた「衝動」が時々起きるのでしょう。


「完了(ワンラ)」=アンラ=マンゴー(酸っぱい)


慰安婦とのシーンですが、よく読むと「接触」なし。
疼痛はマンゴーの汁による「かぶれ」でしょう。


なぜ歯磨きなのかは「お歯黒」を連想させるため。


(……どぶだ。おれは、どぶだ)

落語ファンはピンとくるでしょう。


  吉原の「お歯黒どぶ」




深沢の「土と根の記憶」と同じテーマです。

「ベトコンの記憶」と読んで、敗戦後ベトナムに残り、ベトコン(ベトミン)になった人たちの話。

これも、表には一言も書いてはいませんが。






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by ukiyo-wasure | 2018-05-30 23:28 | 詩・文芸 | Comments(0)