1 四つの処女作の一つで、「酸模」と同じ昭和13年、学習院の「輔仁会雑誌」3月25日号に掲載だそうです。 水車小屋の親父が語る。自分の先祖の話。 維新前に、ある村に坊さんがいて「悟り」を開きたいと思い「聖人」をさがす。 なかなか出会えない。 それで、いろいろなことが起こったりするのですが……省略。 ある日ついに「悟り」を得た。 その庵に、小さな男の子がやってきた。 坊さんは男の子を大変可愛がり、遺産を残した。 遺産とは、箱の中に大きな石。上に「信念」と書いてある。 石の裏側には「この石にかじりつきて働き働くべし、怠ることなかれ」 その男の子は遺言通りに働き、非常な財産家になった。 しかし、その孫の子の代になった頃には、一介の水車小屋の主。 すなわち、語っている当人というワケ。 タイトルが「座禅物語」ですから、禅問答みたいなものでしょう。 オチは何か。 「石の上にも三年」ということわざがあります。 三年→信念になっている。三が「し」=四。 「一多い」と考えると「一多く」=「一億」 昭和13年は1938年。 ウィキによると、この年に「国家総動員法」、前年に「国民精神総動員」というのが出来たらしい。 「一億」といえば、何かスローガンがあった気がして探しました。 これかなあと思う。 進め、一億火の玉だ。 これをもじって、 一多く、貧の極だ。 どうでしょう。もっとキマるのがあるかも。 興味のある方は、全集の1に入っていますので考えてみてください。 軍国主義下ですからね。書いたの誰? *追記 「座禅」=座せん。組しないってことでしょうか。 *追記 2018.5.27 水車は、歌舞伎の仕掛けで「四谷怪談」で使います。 一億、人魂だ! はどうでしょう。 開高健「裸の王様」の「お化け」から、これかなと。
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by ukiyo-wasure
| 2018-05-16 20:17
| 詩・文芸
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と、またまた「人聞きの悪い」話で恐縮ですが。 「春の雪」に「蓼科」というお局みたいな婆さんが出て来ます。 奇妙だと思いませんか、この名前。 作家は、題名と登場人物の名前には凝るそうです。 メタファー小説ということで読んでいますから、当然「意味」を考えました。 タテシナではなく「タデ科」と読んで、ググると「酸模(すかんぽ)」つまりスイバが出て来る。 スカンポ(ウ)にはいろんな呼び名があり、スッポンというのもある。 「春の雪」で、スッポンが池にいて、清顕は子どもの頃から恐れている。 「酸模」は13歳のときの作品で、学習院の文芸誌に載ったもの。処女作ということになっている。 13歳かよ!!!と、興味津々、読んでみました。 あくまでも感想ですが、 本人書いてないでしょ。 誰が読んでも、13歳とは思えない文章です。 しかし、彼は「神童」ですからね。 自分や自分の子どもの13歳と比べてはいけない。 理由はそこじゃない。 ずーっと「掌の小説」を解読してきましたから、「酸模」も同じスタイルの小説だとピンと来ました。 6歳の秋彦の家の近くに、夏になると酸模が茂る丘があって、「灰色の家」(刑務所)が建っている。 ある日、囚人が脱走したため、丘で遊べなくなる。 秋彦はこっそりと一人、丘へ行くが迷子になる。 日も暮れて来る。 と、ひげ面の男が出現(脱走囚)して秋彦を肩車して町へ出る道へ送ってくれる。 囚人は刑務所に自ら戻ってゆく。 刑務所には所長と警部がいる。警部は前科者という設定。 この警部が、囚人の気持ちを代弁する。 『彼は至極月並に脱獄したのです。そして、自分の感情に満ちた心を恥ぢ、盲目のまま理性に向かって突進したのです。併し、彼は、盲目でした。そして理性をとりまいている悪魔のとりことなり、その悪魔は彼にいろいろな事を教へました。「刑務所へ行って残して来た、凶器をもつて来い」と。 併し彼は猪突する一歩前で、救はれました。それは神でした』 所長は「馬鹿馬鹿しい」と言う。彼は続けます。 『私の改悛もこの力でした。併し神は姿を変えて現れます。彼の元に戻った心は、その前に頭を上げることが出来なかったのです。私は、それが出来たら、人間ではないと思います。 ーー所長! 私はちかひます。彼は二度と脱獄はしなひでせう。』 長々と引用しましたが、その後で、新聞を読みながら母親たちが言う。 『凶器って何でせう』 皆さん、解りますか。 「掌の小説」の「夏の靴」と同じテーマです。 https://tamegoro.exblog.jp/28213381/どちらも「脱走」ですからね。 凶器=今日棄=「いろは歌」で「けふ」を取る おくやまこえて=北山越えで(越えられず) 北山は空腹のことね。 「空腹には勝てぬ」ってこと。 そう思って警部の話を読み直してみてください。 灰色の家=会食の家 十三歳で「空腹」を知らない坊ちゃんに書ける? どうゆうルートで代筆が可能かは解りませんが、本人が頼んだわけではないでしょう。 が、読む人が読めば(たとえば深沢とか)解る。 厳密にチェックしていませんが「スカシ(源氏)」も入っている気がします。 この場合、真の作者は谷崎ね。 ……と、決めつけた言い方してしまいましたが、 あくまでも「感想」ね。 本人の作品というなら、「春の雪」より完成度が高い文章だと思いますが、三島ファンの皆様、いかがでしょう。
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by ukiyo-wasure
| 2018-05-16 12:47
| 詩・文芸
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