「全集9」から。この短編もウケる! 「水音」と似た発想から生まれている。 志賀寺上人は、ものすごーく偉いお坊さんです。 若い頃から修行を積み、今や、俗世に何の未練も無し。 日々、極楽浄土を夢見て暮らしている。 あの世へ行く準備万端整って、早くお迎えが来ないかなあ〜。 そんなある日、絶世の美女「御息所」が志賀寺の近くに来る。 志賀寺は大津です。琵琶湖のほとりです。 「御息所」は牛車の御簾を上げて景色を見る。 たまたま、上人がその顔を見る。 上人、雷に打たれたように恋!に落ちる。 若い頃、ギンギンの性欲を修行によって乗り越えた自分が、この歳(70歳は過ぎているでしょう)になって、まさかの「恋の悶々」。 もう24時間、極楽浄土なんかそっちのけで「女の顔」ばかり夢想している。 上人様、とうとう、京都の「御息所」を訪ねる。 「御息所」というのは帝の愛人の一人ね。 さて、「御息所」の方も、あの上人様が自分に恋しているという噂を聞いていて、嬉しくてしょうがない。 絶世の美人ですから、会う男はみーんな自分に惚れる。 そんなのは飽き飽き。嬉しくも何ともない。 あらゆる欲望を捨て去ったはずの男でさえ迷う美貌の持ち主が「ワタシ」。 どうよ、ワタシってスゴくね? と、こうなった。 上人は「御息所」の家の前に立っている。 「御息所」は、しばらく放っておく。 それでも帰らない。 とうとう家に入れる。 御簾の下から、そっと手を出して上人に握らせる。 「御息所」は、上人が御簾を上げるのを待つ……。 しかーし、上人は手を放すと立去ったのだった。 数日の後、上人は草庵で入寂した。 ……こんな話。 とってもロマンチックな文体で描かれています。 極楽浄土の描写が、かなり細かく具体的。 読者から、客観的な思考を奪う作戦。 深沢の小説に多い。 批評家でさえ誘導されちゃう。 客観的に見ると、よくあることで。 高齢化社会の現代はとくにありふれたこと。 認知症の病状のひとつ。俗にいう「色ぼけ」。 題名に答えがあります。 志賀=鹿=か 寺=テンプル テンプ=点フ=ラ ル=l(縦書きの音引き)・し(4) 上人=「ひと」の上=2 の=下ね=金=き=木 恋=51=6=上5=上こ=け これらをまとめると、 かラー42木け=色ロ木け=色呆け
by ukiyo-wasure
| 2018-12-04 12:54
| 詩・文芸
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