「全集6」の、「箱根細工」を跳んで「椅子」。 三島自身の幼い頃のことと「読まれることを前提」に一人称で書いてあります。 母親の手帳の「育児日記」みたいなものを、大人になってから読む。その内容と、主人公自身の回想。ご存知、祖母に育てられ、実母はそばにいながら育児に関われなかったことの恨み。 「きもちわるぅー」表現がある。 母親のメモです、引用します。 涙をいっぱい溜めた長男(三島)は、 『お祖母様、召上がってね、お身体にさはつてよ』 ああ、もう見てもなにも居られない。すらすらそんな言葉の出る神の様な美しい我子を、親の手から奪ひ取り、檻の中の動物のやうに枕許からはなさず〜 「神の様な美しい我子」って!! これも、三島本人の「解説」があります。 〈わざと幼年時代の感傷的な追憶に溺れてみせた私小説「椅子」は〜〉 私小説と言い切っています。 「性」に関する描写がある。住込みの看護婦に「触られる」場面が2カ所。 冷たい拳が、お腹と半ズボンのあひだに林檎のやうに入ってきた。 「おおかはいい」 看護婦は紙袋の底に何かをさぐりあてたやうに小さなものをじつと摘んだ。 私のズボンの下のところをなぜながらする質問を待ったのである。 「これ何でせう、坊ちゃま、丸いもの、丸い小さな二つのどんぐりみたいなもの」 このシーン、既視感があった。 太宰の「人間失格」。 その頃すでに自分は、女中や下男から、哀しい事を教えられ、犯されていました。幼少の者に対して、そのような事を行うのは、人間の行い得る犯罪の中でも最も醜悪で下等で、残酷な犯罪だと、自分はいまでも思っています。 「椅子」には「太宰の呪い」が込められている? 題名の「椅子」というのは何のことか。 看護婦のスカートの上です。 看護婦は路傍に蹲踞(そんきょ)した。その膝の上に私は腰を下ろした。 私は今日まであれだけ坐り心地のよい椅子というものを知らないのである。糊の利いた眩い白さの裾が、坐ると腰のまはりにどんな椅子カバアよりも流麗にふつくらとひろがつて、〜。 この後に、前述のエッチな行為がある。 これって、つまり「人間椅子」ですよね。(江戸川乱歩) 「椅子」=「人間椅子」の「人間」がない。 「人間」失書く=人間失格 「椅子」と「人間失格」双方の主人公はソックリのキャラです。 前の記事で「人間失格」は三島のことではと書いた気が……。 人間=マン=万=バン 失=じつ=実=ビ 人間失格=バンビ書く バンビ=鹿の子=志賀の子 「人間失格」はメタファーが入り乱れて、たとえば「耳だれ」。回収されない伏線ですが「暗夜行路」に出て来るのね。 志賀の子=三島は、どっちもパッケージだけという意味だとは思いましたが、まさかの「実の親子」ならスゴい話だなあと。 写真を見比べたら、晩年の三島がクモザルっぽくみえてきて、なんとなく似ている気がして来た。とくに耳が立っているところ。 事実は小説より奇なりといいますし……。
by ukiyo-wasure
| 2018-11-20 13:45
| 詩・文芸
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