「ヘヴン」です。 天国という意味。2009年「群像」が初出。 これは、読みやすい普通の文章で、ホッといたしました。 あらすじはコチラ。 「ヘヴン」 中学生のイジメの話です。 いじめられっ子の男女が手紙のやり取りをしたりします。 はっきり言わせてもらいます。 まったくリアリティなし! こんなの、ありえへーん! でね、それがワザとやっている感じプンプン。 臭い長ゼリフも、ロンパリとかいう死語も、何もかもが不自然すぎる。 中学生ネタといえば、深沢の「変化草」。 これは、真相はテレビドラマでした。 「かげろう囃子」は芝居、石原慎太郎の「鱶女」はアニメ、「処刑の部屋」は映画、「完全な遊戯」はブルーフィルム。 これら同様、何かの撮影のように読めたのです。 「ロンパリ」とか全裸、残酷なシーンがあるからテレビドラマじゃない。 そこで題名です。 「ヘヴン」は、二人で美術館に行って、女の子(コジマ)の好きな絵のタイトルという設定。 「ヴ」を強調する場面がある。 ここでピーン。 ヴ=V 和歌のテクだと、「ゔ」=うい=V なぜ「絵」を登場させたのか。 「へ」=絵=かい=下ひ=ふ=二=じ=し 「ン」=これはそのまま「ソ」と読む=鼠=ね 「しね」の間にVで「Vシネマ」 ちょっと苦しい? ヒントと思われる描写。 主人公の義理のお母さんは、彼が六歳のときやってきた。 母さんはそのときとまったく変わっていないように見えた。七年前とおなじ髪型をして、太りも痩せもしないで、おなじかたちにしか見えないようなスカートをはき、靴下はいつも足首のところでおなじ太さに折りかえされていた。 アリですか? 教室で同級生の百瀬の描写。 僕は百瀬のときおり動く背中やひじを見ながら、それにあわせて流れてくる口笛をきくともなしにきいていた。なんのメロディかはわからなかったけれど、それはかすれも途ぎれもしない、完璧な口笛だった。立って教室をでることもできたけれど、なぜだか僕はそうしなかった。 百瀬くん、小林旭か!口笛の音、録音だからでしょ。 気になったのが女の子が持ち歩く「ハサミ」の意味。 カット?編集? 読解力に自信のある方、ぜひ読んでみてください。 *追記 よく考えると、冒頭からして変。 2時間目と3時間目の間の休み時間。主人公は筆箱の中に手紙を発見。 いじめっ子からの嫌がらせだと思う。 これが、同じクラスのいじめられっ子、コジマからと後でわかる。 1.2時間目は入っていなかったのに……。 いったい、いつ入れたんだ! 2009年の作品ですが、設定は1992年です。 なぜ、こういうややこしい設定なのか。 コジマの実父は経営する工場が潰れて、一家は貧乏のどん底。その後離婚。彼女が小学生の頃です。日本はバブルのまっただ中でした。 こうゆう不幸が続出するのはもっと後です。 コジマが主人公の髪を切るシーンも怪しい。 小学一年から使っている工作用のハサミで、まとまった髪束をジョキッと切れる? 純文学ではなくミステリーファンの皆様、作者のトリックに挑戦するつもりで読んでみてください。 ああ、それと、「やれやれ」「くすくす」「(喩えとしての)むすびめ」「ハンカチで口をふく」などは、ハルキストにはおなじみワード。 「スノードーム」もちょい気になった。 安西水丸さんがコレクションしていた気が……。 *「中の人」が村上春樹さんということではなく、最近は、春樹さんの「文体模写名人」がいる気がしてきています。
by ukiyo-wasure
| 2018-11-16 04:24
| 詩・文芸
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