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三島由紀夫「蘭陵王」をバッサリ!


「剣」を読むために、全集の「17」巻を借りたのですが、読んでいない作品が入っている。

「絹と明察」など長くて読む気がしない。


「蘭陵王」。ごく短い作品。

「群像」1969年11月号に発表。



「盾の会」のメンバーと富士の裾野で「演習」をしたときの話で「私小説」形式。


これも、ゴーストさんの「罠」ですね。


演習から宿舎に帰って来たところ。引用します。


 その日の演習で汗と埃にまみれたのち、帰営して食べる夕食は美味しく、入浴は快かつた。
 私は全身の汗と泥を、石鹸の泡を存分に立てて洗ひながら、皮膚といふもののふしぎな不可侵に思ひいたつた。もし皮膚が粗鬆であつたら、汗や埃はそこにしみ入って、時を経たあとは、洗い落とさうにも落とせなくなるにちがいない。皮膚のよみがえりとその清さは〜。
ーー中略ーー
 浴室のかへり、空を稲妻が横切った。
 
 
 
そして、部屋に帰る。簡素な部屋の説明。ささくれにヨードチンキを塗る。

そこへ、会員の「S」が訪れ、横笛で「蘭陵王」を吹く。その場には他の会員も四人。


さて、皆様、ここまでで「あれ?」と思ったことありませんか。

全集の付録の冊子で、三島本人が「私小説」と言っている。




 食事の前に風呂でしょ!




題名の解読いきます。


 蘭陵王=乱寮法


汗と埃まみれのまま食事とか、寮のルールを乱しちゃダメじゃん。




ラストが意味深です。

 又Sは、何時間もつづけて横笛を練習すると、吐く息ばかりになるためであらうか、幽霊を見るさうだ、といふ話をした。
 君は見たか、と私は問うた。
 いや、見たことがない、幽霊を見れば一人前だと言はれているが、まだ見たことがない、とSは答へた。
 しばらくしてSは卒然と私に、もしあなたの考へる敵と自分の考へる敵とが違っているとわかつたら、そのときは戦はない、と言つた。



「幽霊」、確かに見えます。正体は、開高健?




by ukiyo-wasure | 2018-10-31 00:25 | 詩・文芸 | Comments(0)
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