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芥川 「一夕話」最高傑作!!


中年男性6人が酒席で、知り合いの実業家のお妾の話。

6人は、学生時代、同じ寮にいた仲間

「わたし」以外は名前と職業が明記。

医師、弁護士、大学教授と、社会的地位が高い面々。


みんな酔いが回って来た頃に、藤井が話し始める。

和田と浅草に行き「回転木馬」に乗った。

そこで芸者の「小えん」に会って云々〜。

小えんは実業家の若槻(風流人)のお妾だったが、別れて、浪花節語りと付き合っているという。

ここから和田(医師)が、風流人より、粗野で教養などなくても「情熱的」な男に惹かれる女の心理を、滔々と語る。


長い長い弁舌の後、ふと見れば、藤井は寝てしまっている。


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実際に読んでもらわないと解りにくいのですが、ストーリーは実にどうでもいい。

藤井じゃないけど寝るほど「退屈」なのです。


それでも、これは、これまで読んだ(大した数ではないけど)芥川の作品中、最高傑作かもしれない。

難は、ほとんどの人に「面白さ」が理解できないということ。

これが谷崎が問題にしたところかなあ。



 一人称のワナ



深沢七郎を解読して、初めて「人称の重要性」に気づきました。

学校では教えませんから、意識しない人がほとんどでしょう。

文芸評論家も騙されちゃう。


一人称は「遠足の作文」と同じ「回想」です。


この小説の変なところは、

回想で
酔っている
他人の会話なのに


描写が細部に渡り「克明すぎる」ということ。


さらに、


ストーリーはまったく面白くない。


どうゆうこっちゃ? 竜之介の意図やいかに?


ヒントは、中年男ふたりが「回転木馬」に乗ったこと。

小えんの、新しい恋人が「浪花節語り」

そして、この浪花節語りをボロクソに表現



始末に終えない乱暴者。
前のなじみの女とは立ち回りのケンカ。
心中未遂。
師匠の娘と駆け落ち。



耳をすませば行間に、



  観客の、大爆笑!



お解りでしょうか。



この小説自体が「丸ごと浪曲」なのです。



 一夕話=一席噺





「〜武者小路実篤を理解している。カアル・マルクスを理解している。しかしそれが何になるんだ?彼らは猛烈な恋愛を知らない」


という部分では、行間から

「いいぞ」
「そうだそうだ」
「まったくだーっ」

という声が聞こえて来ます。



「木馬」=「木馬館」、小えん=落語家のイメージなど、ヒントはあります。



じつは「落語」かなあとも思った。

前後に登壇する浪曲師のことを言って、笑わせているのかとも思いましたが、動作をいちいち書いていますから、落語じゃないという結論。



一人称にはご用心!!



*追記 2018.8.26

藤井が寝て終る=浪曲の枕ということでしょう。

この後に続きそうな話といえば……「森の石松」かなあ。

インテリ、エリート、風流人を気取る気障ったらしい男とは正反対。

これが、なかなかにモテる。

私もタイプです。

by ukiyo-wasure | 2018-08-25 11:28 | 詩・文芸 | Comments(0)
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