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三島「婦徳」ト書きの文体


昭和23年「令女界」に載った短編です。

独特の文体です。


 夕日のなかに淡路島が模糊としている。あかあかと夕日にてらされて帆舟がわななきながら明石の海を通り過ぎる。(中略)ゆらめいているのを漁夫たちは見る。(中略)時々音を立てて跳ねるのを見る。(中略)はじめるのを感じる。(中略)汽笛を突然聞く。
 (中略)煙管をしまいながら立ち上がる。(中略)帰りたいものだと思案する。



語尾に注目です。

すべて「現在形」で書かれている。

まるで、芝居の台本や脚本の「ト書き」です。

「ト書き」についてはGoogle先生に聞いてね。


そしてね、この文体、どっかで逢ったぞ、なのでした。


 ベッドに寝たまま、手を伸ばして横のステレオをつけてみる。目覚めたばかりだから、ターン・テーブルにレコードを載せるのも、なんとなく億劫な気がしてしまう。
 それで、FENにプリセットしたチューナーのボタンを押してみる。なんと朝から、ウィリー・ネルソンの「ムーンライト・イン・バーモント」が流れている。



「深沢七丁目」が出て来て驚いた、一世を風靡した小説です。



「婦徳」に戻ります。

婦=ふ=二=ふた=歌
徳=解く


 婦徳=歌解く



ごく短いけれど三つに分かれている。

何の歌か悩みました。三首入っているのかなあとか。

たぶんコレ。

 あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の
   ながながし夜を ひとりかも寝む


解釈がバッチリ「鳥づくし」の方です。


1章=ホトトギス
2章=真鳥(猛禽)、ウソ、カッコウ
3章=オシドリ


ちなみに三島由紀夫は「古今集」についても書いています。

和歌の裏は読めていないことを確認しました。

だから、本人の作ではないと思います。
深沢に一票!


by ukiyo-wasure | 2018-06-09 15:31 | 詩・文芸 | Comments(0)
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