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川端康成「イタリアの歌」には悩む


「禽獣」を読むために図書館で借りた岩波文庫です。

川端康成「イタリアの歌」には悩む_b0230759_20545910.jpg


抒情歌・二十歳・寝顔・禽獣・田舎芝居・童謡・イタリアの歌

数ある作品の中で、この7作品すべてが「アヤシい(代作疑惑)」。

何らかのトリックか、スカシ(解る人にだけ解る署名のようなもの)入りです。

最初の五作品については解説しました。

「童謡」は「盗用」と読み、かなり複雑なものが入っている模様。

なので置いておきまして、

ラストの「イタリアの歌」です。

1936年の作品。

何とまあ、文体が深沢っぽい。当時は21歳くらいだから、ないか。

ま、誰の作品でもいいのだけれど、これも「源氏」が入っている。

スカシで入れているというより、そこからの発想で生まれたのではと思ってしまう。

やっぱし、伏線を放りっぱなしで終っている。

ラストから三行目のこの一文。


なんといふことなしに、「家なき子」の「イタリアの歌」を歌ひ始めた。


調べましたら、「ニーナの死」という歌曲。

Google先生のおかげです。

でなきゃ、私なんかに解りっこありません。

ニーナ=Nina。ニナでもいい。


イタリアの歌ですから、ニナはイタリア語。

などと、ボンヤリしているとダマされちゃう。

「にな」を辞書で引くと「蜷」が出る。

巻貝のことです。

「細雪」にも出てきました。猛毒を持つものがある。

じつは「源氏」のある章がコレ

いやはや、参りました。こんな形で入れているとは!


収録の七作品を選んだのは、川端氏ではなく編集部だそうです。


編集者さん、裏事情を知ってた?



追記 2018.3.11

「イタリアの歌」は「色彩を持たない多崎つると、彼の巡礼の年」第4章と一致ですね。


貝やネジ関連の、思わせぶりな表現がいっぱいです。

例えば、

ふくらはぎは釉薬が塗られた陶器のように白くつるりとしていた。



ちなみに「細雪」下巻の35章が「巻貝」です。こちらは、


痩せた、面長の、象牙のような血色をした、ちょっと能役者と云った感じの人で〜



巻貝を人間の容姿で表現するって、面白いでしょ。



やってみまーす。


年齢のわりに、不自然なほど小じわのない皮膚はリフトアップ手術のせいか。彼女が上向くと、厚塗りしたパールホワイトのファンデが、水平線上にある夕日にテカった。

by ukiyo-wasure | 2018-03-10 21:31 | 詩・文芸 | Comments(0)
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