「雪国」には、スカシのように「源氏物語」が入っていると書きました。 やっぱりそうでした。 表では「澪標」「手習い」「鈴虫」「闇」などですが、裏の意味でも狐・ガマ・蛭・熊・雷などが目につきます。 そして、コレ。皆様、どう解釈しましたか。 「君はいい女だね」 「どういいの」 「いい女だよ」 「おかしなひと」と、肩がくすぐったそうに顔を隠したが、なんと 思ったか、突然むくっと肩肘立てて首を上げると、 「それどういう意味? ねえ、なんのこと?」 島村は驚いて駒子を見た。 「言って頂戴。それで通ってらしたの?あんた私を笑っていたのね 。やっぱり笑ってらしたのね」 真赤になって島村を睨みつけながら詰問するうちに、駒子の肩は激 しい怒りに顫えて来て、すうっと青ざめると、涙をぽろぽろ落した。 「くやしい、ああっ、くやしい」と、ごろごろ転がり出て、うしろ 向きに坐った。 島村は駒子の聞きちがいに思いあたると、はっと胸を突かれたけ れど、目を閉じて黙っていた。 「悲しいわ」 駒子はひとりごとのように呟いて、胴を円く縮める形に突っ伏した。 そうして泣きくたびれたか、ぷすりぷすりと銀の簪を畳に突き刺 していたが、不意に部屋を出ていってしまった。 「いい女」を何と聞き違えたのか。 「海鷂魚(えい)女」でしょう。 「源氏物語」の裏読みでは、近江の君=アカエイです。 ペラペラと早口の女性。末摘花とならぶ、笑わせキャラです。 アカエイは刺されると極めて危険。 何を言っているのか理解不能な人がほとんどでしょう。 海鷂魚については「騎士団長殺し」で触れた気がします。 死ぬとアンモニア臭がする。 小便臭い=青臭い小娘 このギャグのセンスは、じつに谷崎っぽいわけで……。 他にも「狐の嫁入り」という、まったくイミフな喩え。「狐」を出すためにワザとやったと思われます。 そうそう、霜柱を「寒天」に喩えたのも笑っちゃいました。
by ukiyo-wasure
| 2018-02-14 17:50
| 詩・文芸
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