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第六感

 シックスセンスですが、超五感ですね。似たものが「勘」で、同じカンですが字が違います。経験によって養われるらしい。潜在意識に残っている経験や知識です。PCのデータもゴミ箱にポイしたくらいでは本当に削除されないで残っている。そんなレベルの経験がカンとして働くようです。

 前置きが長くなりましたが、村上春樹さんです。何度も読もうとして数ページで挫折。このたび新刊が出まして、やはりすごい人気です。
 なぜ読めないのか、自分では解っている。表現にリアリティがないから、映像が立ち上がらないのです。文字を読む機能と、映像を結ぶ脳内の機能が、同時進行しないのです。たぶん…私の脳の構造のせいでしょう。
 
 じつは、谷崎や源氏物語も同じ理由で、ずっと読む気がしなかった。あと…太宰はべつの理由で好きになれなかった。のですが、ここに至って、リアリティがないのは谷崎や源氏同様「隠喩」のせいであるとピーン!ときた。「第六感」が働いたのです。
 
 そこで、手はじめに「風の歌を聴け」ですよ。

 “最後に会った時、彼はまるで狡猾な猿のようにひどく赤茶けて縮んでいた”

 ただの猿ではありません。「狡猾な猿」です。以前ならここで本を閉じていた。どんな猿やねん!具体的に表現してくれ!なのです。今は源氏物語で鍛えられていますからね、ちょっとは考えます、何の比喩だろうと。「狡猾」を付けなければいけなかった理由ですね。

 双子の女性で一人が幼い時に小指を欠損したエピソード。双子からアレコレ考えると「星座かなあ、山羊も出て来るし…」となりますが、小指からの連想ですと「指切りゲンマン嘘ついたら針千本のーます」で「針」を意味しているのかともなります。針針針…蜂?それとも「縫う」? はたまた「9指」で「急死」?

 こんな感じで読み進むとしたら、長編はエラいことになりますね。ファンの皆様は解きながら読み進むのでしょうか。スゴいですね。


 もう一つ気になったのが、

 “十代の頃だろうか、僕はその事実に気がついて一週間ばかり口もきけないほど驚いたことがある〜”

 これと似てるなあと感じたのが太宰の「富嶽百景」の場面。太宰は苦手だけど、北斎の「富嶽百景」の謎解きの参考にと読みました。

 “三年まへの冬、私は或る人から、意外の事実を打明けられ、途方に暮れた。その夜、アパートの一室で、ひとりで、がぶがぶ酒のんだ。一睡もせず、酒のんだ。”

 

by ukiyo-wasure | 2017-02-26 13:02 | 詩・文芸 | Comments(0)
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