「らくだ」もかなり好きな落語。登場人物のくず屋さんが大好き。
らくだというのはあだ名で、のっけから死体で登場する。フグにあたってフグ死んじゃった。こいつは最悪、人間のクズです。 でもねぇ、こういうクズであっても、生涯に一度は人に喜ばれることをするんだなぁ、と感慨深いお噺なんですよ。「蜘蛛の糸」みたいな話じゃありません。 この人は「死んで」喜ばれた。並大抵の者にできることじゃない。近所中、大喜びさせたんですら。 ここにらくだの兄弟分が出て来る。類は友を呼ぶ。この人も死んで人を喜ばす奇特な方とお見受けいたします。 この人とくず屋さんのやりとりが絶品。くず屋さん、はじめはペコペコして逆らわない。それが身に付いているのです。ところが、通夜の酒を飲んでいるうちに態度が変貌してゆく。 らくだやその兄弟分はヤクザもんです。働かないで、カタギを脅してゆすりたかりをしている。くず屋さんは、こういう人間を軽蔑している。 「何だ、こんなロクでもない野郎。こちとら社会の底辺にいるけれども、一生懸命働いて家族を養っているんだぞ。苦労の仕方が違うんだ。人間のクズにクズヤクズヤと呼び捨てにされる筋合いはねえーや」 とまあ、思っているんじゃないかと…ね。 最後は説教じみた様子になって、顔中傷だらけの「兄弟分」もたじろぐ。 本当は度胸もあるんでしょう。でも家族の為に、堪え難きを堪え、忍び難きを忍び、働いている。そういうくず屋さんの、人間としての矜持。かっこいい!なあ。
by ukiyo-wasure
| 2012-01-16 17:53
| 落語
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